犬の腸閉塞(ちょうへいそく)は、腸管が異物や腫瘍などで塞がれてしまい、食べたものや消化液が正常に流れなくなる緊急性の高い疾患。放置すると腸の壊死や腹膜炎を引き起こし、命に関わることもあるため、早期発見と迅速な対応が欠かせない。
犬の腸閉塞の手術費用は、一般的に15〜30万円程度が目安。腸の一部切除が必要になるケースでは、さらに費用が膨らむことがある。
この記事では、犬の腸閉塞の症状、原因、手術費用の相場、診断から手術までの流れ、そして緊急時にどう対応すべきかを詳しく解説する。

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犬の腸閉塞とは
腸閉塞とは、何らかの原因で腸管内の通過が妨げられた状態のこと。「イレウス」とも呼ばれる。腸の中を食べ物や消化液が通過できなくなるため、激しい嘔吐や腹痛が起こる。
腸閉塞には大きく分けて2つのタイプがある。
- 機械的腸閉塞:異物・腫瘍・腸重積などが物理的に腸管を塞ぐタイプ。犬ではこちらが最も多い
- 機能的腸閉塞(麻痺性イレウス):腸管の運動機能が低下して内容物が停滞するタイプ。手術後の合併症として起こることがある
腸閉塞が起きると、閉塞部位より上流の腸管が拡張し、腸壁への血流が障害される。血流障害が進むと腸管が壊死し、穿孔(穴が開くこと)が起きて腹膜炎に発展する。腹膜炎はショック状態を引き起こし、治療が遅れると命を落とすこともある非常に危険な状態。
犬の腸閉塞の主な症状
腸閉塞が発生すると、以下のような症状がみられる。閉塞の位置によって症状の出方が異なる。
上部(十二指腸〜空腸上部)の閉塞
- 激しい嘔吐が早期から始まる
- 嘔吐物に胆汁(黄色〜緑色の液体)が混じる
- 急激な脱水が進行する
- 食欲の完全消失
下部(空腸下部〜回腸)の閉塞
- 嘔吐の開始がやや遅い
- お腹が張って膨らむ
- 便が出なくなる
- 食欲不振が徐々に進行
共通の症状
- 激しい腹痛:お腹を触ると痛がる、背中を丸めてうずくまる、祈りのポーズ(前足を伸ばして胸を地面につけ、お尻を上げる姿勢)
- 元気の消失:ぐったりして動かなくなる
- 脱水症状:嘔吐が続くことによる脱水で、皮膚の弾力が失われる
- 発熱:腸管の炎症や壊死が進行すると体温が上がる
嘔吐を繰り返して水も飲めない状態が半日以上続く場合は、腸閉塞の可能性を疑って緊急受診すること。特に異物を飲み込んだ心当たりがある場合は、すぐに動物病院に連絡しよう。「祈りのポーズ」は強い腹痛のサインであり、見逃してはいけない。
犬の腸閉塞の主な原因
1. 異物の誤飲(最も多い原因)
靴下、おもちゃの破片、ひも状のもの、トウモロコシの芯、果物の種、骨など、消化できないものを飲み込んでしまい、腸に詰まるケース。ひも状の異物(リボン、糸、ストッキングなど)は特に危険で、腸がアコーディオン状に縮まり、複数箇所で穿孔を起こすことがある。この場合の手術は非常に複雑になり、費用も高額化する。
おもちゃの破片による誤飲を防ぐには、噛みちぎりにくい丈夫な素材のおもちゃを選ぶことも大切です。
2. 腫瘍
腸管にできた腫瘍が大きくなり、腸管の内腔を塞いでしまうケース。高齢犬に多く、リンパ腫や腺癌が代表的。腫瘍による腸閉塞は慢性的に進行し、体重減少や慢性的な嘔吐として現れることがある。
3. 腸重積(ちょうじゅうせき)
腸の一部が隣接する腸管内に入り込んでしまう状態。子犬に多くみられ、腸炎や寄生虫感染がきっかけになることがある。激しい腹痛と嘔吐が特徴。
4. ヘルニアによる腸管の絞扼(こうやく)
鼠径ヘルニアや横隔膜ヘルニアなどで腸の一部が絞めつけられるケース。血流が遮断されると短時間で腸管が壊死するため、緊急手術が必要。
5. 術後の癒着
過去に腹部の手術を受けた犬では、手術部位の癒着が原因で腸閉塞を起こすことがある。


犬の腸閉塞の手術費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 診察料・初診料 | 1,000〜3,000円 |
| 血液検査 | 5,000〜15,000円 |
| レントゲン検査 | 3,000〜7,000円 |
| 超音波検査 | 3,000〜5,000円 |
| バリウム造影検査(必要な場合) | 5,000〜10,000円 |
| 全身麻酔 | 10,000〜30,000円 |
| 腸切開術(異物摘出) | 50,000〜100,000円 |
| 腸管切除・吻合術(壊死がある場合) | 100,000〜200,000円 |
| 入院費(3〜7日) | 15,000〜35,000円 |
| 点滴・投薬 | 10,000〜30,000円 |
| 合計目安 | 15〜30万円程度 |
腸の壊死が進んでいて腸管の一部を切除する場合は、30〜50万円以上になることもある。また、術後に合併症(腹膜炎や縫合不全)が起きた場合は追加の治療費が発生する。夜間の緊急手術では通常の手術費に加えて時間外料金が上乗せされるケースもある。
- 腸閉塞の手術費用は15〜30万円が一般的な目安
- 腸切除が必要になると費用はさらに増加する
- 術後の入院は3〜7日程度必要になることが多い
- 夜間緊急手術の場合は追加料金が発生することがある
- ペット保険に加入していれば大幅に自己負担を軽減できる
腸閉塞の診断と治療の流れ
1. 問診・身体検査
異物を飲み込んだ心当たりがあるか、症状の経過などを聞き取り、腹部の触診を行う。腸閉塞では触診でソーセージ状に腫れた腸管を触知できることがある。
2. 画像検査
レントゲンと超音波(エコー)検査で異物の位置や腸管の状態を確認する。金属やプラスチックはレントゲンに映りやすいが、布やゴムは映りにくいためエコーが重要。バリウム造影検査が行われることもあり、バリウムが止まる場所が閉塞部位と判断される。
3. 血液検査
脱水の程度、感染の有無、電解質バランス、全身状態の評価を行い、手術に耐えられる状態かどうかを判断する。重度の脱水がある場合は、まず点滴で体液バランスを安定させてから手術に臨む。
4. 手術(開腹手術)
腸閉塞と確定したら、全身麻酔下で開腹手術を実施。異物を摘出し、壊死した腸管があれば切除して健康な腸同士を吻合(つなぎ合わせ)する。腸の状態によっては複数箇所の切除が必要になることもある。
5. 術後管理
術後は絶食・点滴管理で腸の回復を待つ。通常24〜48時間後から少量の水や流動食を開始し、段階的に通常食に戻していく。抗生物質や鎮痛剤の投与も行われる。退院後も2〜4週間は消化の良い食事を少量ずつ与える管理が必要。


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緊急時の対応
- すぐに動物病院に連絡する:症状と経過(いつから嘔吐が始まったか、異物を飲んだ可能性があるか)を伝える
- 食事と水を与えない:嘔吐がひどい場合は無理に水を飲ませない。手術前の絶食が必要になることが多い
- 飲み込んだ可能性のあるものを伝える:何を飲み込んだか分かれば、獣医師の診断に大きく役立つ。飲み込んだものと同じものがあれば持参する
- 夜間・休日でも対応する:腸閉塞は時間との戦い。夜間救急対応の動物病院を事前に調べておくことが重要
- 嘔吐物を記録する:嘔吐物の色、量、頻度を記録しておくと、獣医師への情報提供に役立つ
夜間や休日に慌てないよう、ペットの応急手当や受診の目安をまとめた本を手元に置いておく飼い主もいます。
犬の腸閉塞を予防するには
- 床に小物や衣類を放置しない
- 犬用おもちゃは破損していないか定期的にチェックする
- ゴミ箱にはフタをつける
- 散歩中の拾い食いに注意する
- ひも状のもの(リボン、輪ゴム、糸くずなど)は犬の手が届かない場所に保管する
- 子供のおもちゃの小さなパーツに注意する
- 「出して」「離して」のトレーニングを普段から行っておく
よくある質問(Q&A)
Q. 腸閉塞の手術で犬が死亡するリスクはある?
A. 腸閉塞自体が命に関わる疾患であり、手術にもリスクは伴う。ただし、早期に手術を行えば回復する可能性は高い。手術が遅れるほどリスクは上がるため、早期受診が非常に重要。術後の縫合不全(つなぎ目がほどける)や腹膜炎のリスクもゼロではない。
Q. 腸閉塞の手術後、食事はいつから再開できる?
A. 一般的には術後24〜48時間後から少量の流動食を開始。腸の回復状況を見ながら、1〜2週間かけて通常食に戻していく。退院後も消化の良い食事を少量ずつ与えることが推奨される。
Q. 腸閉塞はペット保険で補償される?
A. 誤飲による腸閉塞は、ほとんどのペット保険で補償対象。腫瘍による腸閉塞も補償対象となるケースが多い。保険約款を確認しておくと安心。
Q. 腸閉塞を起こしやすい犬種はある?
A. 特定の犬種が腸閉塞になりやすいというよりも、好奇心旺盛で何でも口にする性格の犬に多い。ラブラドールレトリバーやビーグルは物を飲み込みやすい犬種として知られている。子犬は特にリスクが高い。
Q. 腸閉塞を繰り返すことはある?
A. 誤飲癖のある犬は繰り返す可能性がある。一度腸閉塞の手術をした犬の飼い主さんは、再発防止のための環境整備を徹底することが重要。
まとめ
犬の腸閉塞は放置すると命に関わる緊急疾患であり、手術費用は15〜30万円程度が一般的な目安。腸の壊死が進行している場合はさらに高額になる可能性がある。
最も多い原因は異物の誤飲であり、日頃の環境整備と拾い食い防止が最大の予防策。嘔吐を繰り返す、食欲がない、元気がないといった症状がみられたら、腸閉塞を疑って速やかに動物病院を受診しよう。
万が一に備えて、ペット保険への加入と夜間救急対応の動物病院の確認をしておくことが大切である。
参考:ペット保険比較のピクシー「犬の腸閉塞の症状や手術費用は?」 FPCペット保険「腸閉塞」 PS保険「犬の腸閉塞の症状と原因」
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